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アリとキリギリスと猫と人間

2026/1/29
in ストエレの奇妙な制作日記

春が来てしまった。東京の話ではない。私が暮らす地域のショッピングモールの話である。

いつかの会議の時、猫太郎が「この服、すごく暖かいよ♪オレ、色違いでふたつ買っちゃった」と自慢をしてきたもモフモフのパーカーが欲しくなり探しに行ったら、なんと店内ではすでに春服が販売されており、モフモフのパーカーをはじめとした冬服は大半が撤去された後だったのだ。

「そんな……まさか……」と店内をうろつくが、残念ながらお目当てのモフモフのパーカーは見つからない。ネットで購入するという手は残されているが、私は今、この瞬間にモフモフに包まれたかったのである。

実は、私極夢幸雷は、毎年これを繰り返している。

冬物が安く売り出される12月の年末セールを「まだそんなに寒くないし」と見送り、冬物が叩き売られる年明けのセールを「別に思ったほど寒くなくない?」と見送り、そして1月終わりの今、冬が本気を出してくるこの時期になり、ようやく自分が犯した致命的なミスに気づき後悔するのだ。

私は12月と 1月のセールで、「冬を乗り切れるだけの十分な装備」を揃えておかなければならなかった。「まだ寒くない」「この先もっと安くなるかも」などと思わず、冬の脅威に備え、前もってモフモフのパーカーを買っておくべきだったのだ。

思えば、猫太郎があのパーカーを初めて自慢してきたのは、今から2ヶ月くらい前だ。あぁ見えて、猫太郎は計画的に冬を越す準備をしていたらしい。

しかし私は、「寒くなってから考えればいいや」と脳天気に毎日を過ごした結果、これである。モフモフのパーカーがないので、今は毛布にくるまって震えている。アリとキリギリスの童話で言うなら、猫がアリ、私がキリギリスだろう。

ところで、キリギリスは最近、粘土を焼くためのオーブントースターを購入した。これまでは普通に家にある調理用のものを使い焼いていたのだが、利便性と安全性を考えた結果、専用のオーブントースターがある方がいいだろうと思ったのである。

ちなみに、このトースターは下の段でパンを焼き、上の段では目玉焼きが焼けるという洒落た商品である。粘土専用にするので目玉焼きを焼くことはおそらくこの先ないのだが、私はこういう「あってもなくてもいいようなギミック」が大好きだ。

しかし、私には目玉焼きを焼けるトースターはあっても、冬を越せる暖かい服がない。

童話ではキリギリスは冬を越せずに命を落としてしまうが、しかし私は図々しいキリギリスなので、あることを閃いた。そうだ、猫がもっているモフモフのパーカーを一着貸してもらおう。そして暖かくなったら返そう。お礼にこのオーブントースターを、しばらく貸してあげてもいい。猫も専用のオーブントースターは持っていないハズだから、粘土の制作をする時は役立つだろう。

素晴らしいひらめきであったが、猫太郎は「来週あたり粘土制作をするからオーブントースターは借りたいけど、パーカーは無理」とすげなく断ってきた。ギブアンドテイクの精神のない猫である。

私は今、この冬がこれ以上寒くなることなく、春が来ることを祈っている。そして来年こそは、12月のセールで「冬を越せる暖かい服を買おう」と固く誓うのであった。

目玉焼きも焼けるオーブントースター。


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