カウントダウンが始まってしまった。
クリスマスや正月のことではない。私、極夢幸雷のMac Book Proのバッテリーの話である。
以前より調子が悪く、時折充電ができないことがあったのだが、先日ついに、愛機は完全に充電を止めた。
「どうして?」「今までずっと一緒に頑張ってきたじゃん」「まだ早いよ」
そんな言葉をかけつつ、Macの調子が悪い時に行うSMCリセットを試したり、電源ジャックを綿棒でほじくってみたりしたのだが、画面右上に表示されるバッテリー残量は微動だにしない。むしろちょっと減った。
日頃の行いが悪かったのだろうか。もしかしたら猫への当たりがきつかったかもしれない。もっと綺麗な心で生きていれば……。そんな風に悔やんでも後の祭りだ。
現在のバッテリー残量は28パーセント。天国へのカウントダウンである。
幸い、アダプターをつないでいれば、バッテリー残量が減ることはないのだがこの数値はいささか不安ではある。
例えば、何かの間違いでうっかりアダプターを抜いた状態で使用してしまったり、電源を切っていても、長時間アダプターを抜いた状態で持ち歩けば多少は電池が減っていく。
そして一度減ってしまったバッテリー残量は、再度アダプターを繋いだとて決して回復することはないのだ。
バッテリー残量が0になった時、果たしてこのMacは電源が入るのだろうか?予想だが、スマホのように「使いたければまずは充電しろ」と言い出すような気がしてならない。
対処法としては、どうやらバッテリーの交換しかないようだが、11年使っているこのMac Book Proに果たしてそれだけの価値があるのかどうか、いまいち判断がつかない。
ふと、猫に相談してみようと思った。といっても、ただの猫ではない。我がバンド、ストレンジ・エレクトリック・ドリームズの猫こと奇怪田猫太郎である。やつはああ見えて、とても機械に強いのだ。
以前猫は、実家の壊れたゲーム機をヒートガンを用いて修繕し、歳の離れた弟からえらく尊敬されたという経歴を持つ。そんな猫なら、もしかしたらバッテリーの交換以外の修理方法を知っているかもしれない。
一縷の望みをかけ、さっそくLINEを送ったら「いやぁ、オレMacはよく知らん。Windows買えば?デスクトップなら壊れたらパーツ交換すりゃいいし、便利よ」と期待はずれの返答がきた。
そう、猫はWindows派なのである。常日頃から「OSが同じだったら制作を進める上でも便利なのに……」とボヤいている猫は、チャンスとばかりに私にWindowsへの買い替えを勧めてきたので、ひとまず既読スルーをしてラインを閉じた。
こちらから質問しておいてなんだか、私が送って欲しいのは『猫のおすすめのWindowsのノートパソコン一覧リスト』ではなく、『Mac Book Proのバッテリーをどうにかする方法』である。
さて、どうしたものか。
このまま、常にバッテリーの状態に気を配り、機嫌を取り、丁重にもてなし接待を続ければしばらくは使えそうな気もするが、パソコンが天国へ逝ってしまうと、バンドでの制作はもちろん、日常の娯楽にも大きな影響が出る。私はパソコンの大きな画面でYouTubeを見ることを日々の楽しみにしているのだ。
「買い直すか?でも25万円はなかなかの出費……かと言ってバッテリー交換に4万円かけるのもちょっと……」
しかし、いくら悩んでも事態が好転するわけではない。
「今日はもう寝よう。もしかしたら朝起きたら直っているかもしれないし……」
そんな奇跡が起こるわけはない。誰もがそう思うだろうし、私自身もそう思っていた。しかし、奇跡が起きたのである。
翌朝、なんとパソコンのバッテリーが100パーセントに回復していた。
どうやら私の日頃の行いは、ちょっとした奇跡を起こせる程度には良かったらしい。電池残量ともに、ここ数日バッテリーの件で下降気味だった私の精神状態も100パーセントまでうなぎ上りに回復した。
このことを猫にLINEで報告すると、「そのバッテリー、信用ならねぇな(笑)」と返事が来た。
そんな猫を「愚か者め、信じるものは救われるのだ」と鼻で笑い、今、バッテリー残量100パーセントのMacでこの日誌を書いている。
そろそろ一年も残りわずかとなったが、今年はストエレの制作も順調に進み、良い気持ちで年を越せそうである。
この後は、 YouTubeを見ながら作りかけの『プッピスのハンモック』を完成させる予定だ。



