「これは……!」
2026年、年明けそうそう、私極夢幸雷は不審者ムーブをかましていた。しかし今回ばかりは目を瞑っていただきたい。仕方がなかったのだ。だって目の前には、長年喉から手が出るほど欲しかった、1枚のCDがあったのだから……。
話は数日前にさかのぼる。私はその日、所用で渋谷へと出かけてきていた。
暖冬といえど1月の東京はそれなりに寒い。用事を済ませて帰路に着くころには、私の体はすっかり冷え切っていた。
そこで、電車に乗る前にどこかでコーヒーでも飲んで温まるかと手近なビルに駆け込んだところ、ある店を見つけた。
それは、スクエアエニックスの公式ショップであった。
目の前には、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーのキャラクターのぬいぐるみが、ところせましと並んでいる。どうやら奥にはフィギュアもあるようだ。
渋谷にこんなに素敵なお店があるなんて知らなかった!とウキウキで店内へと足を踏み入れ、隅々までグッズを物色する。個人的にはメタルスライムの貯金箱が気になった。なんとなくお金が溜まりそうである。
冷えていた体もいつの間にか温まり、「さてそろそろ帰ろうか」と思ったその時、ふと目の前の「サウンドトラックコーナー」の棚を見て、私は目を疑った。
そこには、私が長年喉から手が出るほど欲していた、マリオRPGのサウンドトラックが陳列されていたからだ。
マリオRPGというのは、スクエニと任天堂が共同開発したいわずと知れた名作で、ゲームの内容だけではなくその音楽も大変素晴らしいのである。しかし1996年に発売されたスーパーファミコン版のサウンドトラックのCDはずいぶん前に絶版となっており、15年ほど前は8万円、5年ほど前はさらに値上がりして13万円という高額で取引されていて、とてもじゃないが手を出すことができなかったのだ。
それがなんと、すぐ目の前にある。
「これは……!いくらだ?」
それが、真っ先に抱いた感想であり疑問であった。流石に13万円のものを、こんな風に普通に並べることはないだろうが、マリオRPGのサウンドトラックには、過去にそれだけの値がついていたのもまた事実である。
私は震える手でCDを手に取り、そっと裏返す。そこには、3,500円と記載されていた。
そして、ピンときた。
「そうか、リメイク版か……」
私はガックリと肩を落とした。
そう、マリオRPGは2023年にリメイクされ、現在はSwitch版が販売されているのだ。Switch版では音楽もバージョンアップされ、より華やかなものとなっているのだが、私が求めているのは、あのスーパーファミコン版の、どこかレトロなサウンドなのである。
「これじゃないんだよぉ……!」
メタルスライムに出会い、逃げられたらこんな気持ちだろうか。
幸い、サウンドトラックコーナーは人が少なかったので、怪しい女がCDを片手に喜んだり落ち込んだりしていても、おそらく誰にも迷惑はかけていないだろう。そう信じたい。
しかし、こうしてリメイク版が出たのなら、もしかして絶版になっていたあのCDも価格崩壊を起こしているのでは?いや、あるいはSwitch版が出たからこそ、さらに価格が高騰している……?
そんなことを思いながら帰り道にスマホで調べていると、なんと2025年に発売されたボックス版の4枚組サウンドトラック(7,500円)ならスーパーファミコン版の音源も収録されているというではないか。
「マジか」
と電車で思わず声が出た。
ゲーム音楽については、まだまだ語りたいことがたくさんあるのだが、今日はこの後、猫太郎との会議が控えているので、このあたりで筆を置く。
余談ではあるが、私はドラクエ派であり、猫太郎はFF派だ。どちらも名作であることは疑いようもない事実だが、今日の会議も荒れそうである。

Switch版ストエレとスーファミ版ストエレ。


